こんにちは、中小企業診断士×薬剤師の「はらだ」です。
以前のブログで、組織を強くしメンバーを育てるための「エンパワーメント(権限移譲)」の重要性についてお話ししました。

「重要性は分かっている。けれど、どうしても仕事を任せられない」
そう悩む管理職の方は少なくありません。任せられない原因を紐解くと、大きく2つの心理的なハードルに行き着きます。
- 「自分でやった方が早い」と思ってしまう
- 「任せることで部下に嫌がられたらどうしよう」と不安になる
1の場合は、長期的な視点で部下を育成する投資としての重要性を認識し、意識を変えていく必要があります。
今回は、多くの心優しい上司が頭を悩ませている「2. 任せて嫌がられたらどうしよう」という不安への具体的な処方箋を考えてみたいと思います。
もちろん、「この方法を使えば確実に部下が嫌がらず、すべて円滑に引き受けてくれる」という魔法のようなテクニックは存在しません。しかし、部下のモチベーションを尊重しながら、お互いにストレスなく仕事を任せるための「コツ」は存在します。
その鍵となるのが、「ソーシャルスタイル理論」です。
4つのタイプに分類する「ソーシャルスタイル診断」とは
ソーシャルスタイル診断とは、1960年代にアメリカの産業心理学者デビッド・メリル氏らが提唱したコミュニケーション理論です。
人の言動を「感情を表に出すか・抑えるか」、そして「自分の意見を主張するか・相手の意見を聞くか」という2つの軸で分析し、以下の4つのタイプ(スタイル)に分類します。

① エクスプレッシブ(直感型):「感情を出す」×「意見を主張する」
- 特徴:明るく賑やかで、直感的に動くことを好むお祭り男・お祭り女タイプ。
- 口癖:「それ面白そう!」「なんかイイ感じですね!」
- 付き合い方のコツ:まずは相手の熱量やノリを合わせる。細かいデータよりも「それ、すごくいいですね!」とプロセスや情熱を褒めることで意欲が高まります。
②ドライバー(実行型):「感情を抑える」×「意見を主張する」
- 特徴:とにかく結果重視。無駄を嫌い、決断力に溢れるリーダータイプ。
- 口癖:「結論から言うと何?」「早く進めよう」
- 付き合い方のコツ:要点を端的に、結論から伝える。長い前置きや言い訳は避けるのが無難です。
③ エミアブル(協調型):「感情を出す」×「意見を聞く」
- 特徴:平和主義で聞き上手。全体の調和と人間関係を一番に考えるオアシスタイプ。
- 口癖:「みんなはどう思う?」「何でも合わせるよ」
- 付き合い方のコツ:決して急かさないこと。意見を求めるときは「あなた自身はどう思う?」と、個別に優しく問いかけてあげる対話が大切です。
④ アナリティカル(分析型):「感情を抑える」×「意見を聞く」
- 特徴:慎重で、データや客観的事実を重んじる職人・研究者タイプ。
- 口癖:「それって具体的にどういうこと?」「根拠(数字)は何ですか?」
- 付き合い方のコツ:数字や事実、理論的な背景を揃えて説明する。「なんとなく」や勢いだけの説明、感情論による説得は逆効果になりがちです。
現場で起きる「任せ方のすれ違い」という悲劇
このソーシャルスタイルを理解していないと、現場では良かれと思ったアプローチが裏目に出るという悲劇が起こります。
少し極端な例で考えてみましょう。 上司であるあなたが、部下のAさんとBさんに新しい仕事を任せようとしています。
パターン1:丁寧に説明して任せる
あなたは2人を呼び出し、仕事の目的やリスクを資料を用いて論理的かつ丁寧に説明し、「まずは計画を立てるところから始めてみてください」と伝えました。
- 結果:Aさんはすぐに納得し、計画づくりに着手してくれましたが、Bさんはなんだか面倒くさそうで、モチベーションが上がらない様子です。
パターン2:ざっくりと信頼して任せる
あなたは2人に、「目的は〇〇だから、あとは思うように自由にやってみて!わからないことがあればいつでも聞いて」と裁量を与えて伝えました。
- 結果:Bさんは「早速やってみます!」と意気揚々と引き受けた一方、Aさんは何から始めたらいいかわからず、表情を曇らせて困ってしまいました。
この結果を見て、上司であるあなたはこう感じてしまうでしょう。 「Bさん(あるいはAさん)に仕事を任せたら、すごく嫌そうな顔をされた。もう今後は仕事を振りづらいな…」と。
しかし、これは部下が不真面目なのでも、仕事を嫌がっているのでもありません。単に「相手のスタイルに合わない任せ方をしてしまった」だけなのです。
実は、部下のAさんは「アナリティカル(分析型)」でした。より詳細な情報や手順のガイドラインを事前に与えてもらうことで、安心して一歩を踏み出せるタイプです。そのため、パターン2のような曖昧で勢い任せな任せ方には強い不安と苦手意識を感じてしまいます。
一方で、部下のBさんは「ドライバー(実行型)」でした。要点を端的に伝えられ、自分の裁量でスピーディーに進めることを好むタイプです。そのため、パターン1のように長い説明や、細かなプロセスの指示を最初に受け取ると、「信頼されていない」「前置きが長くてじれったい」と感じてモチベーションを落としてしまうのです。
特に対極にいる「自分ルール」の罠に注意する
このコミュニケーションのすれ違いは、自分と相手のソーシャルスタイルが「対極」に位置する場合に、最も発生しやすくなります。
- 「ドライバー(実行型)」⇔「エミアブル(協調型)」
- 「エクスプレッシブ(直感型)」⇔「アナリティカル(分析型)」
人間は誰しも、自分が心地よいと感じるコミュニケーション方法を「普通」や「良かれ」と思って相手に対しても使ってしまいがちです。
例えば、自分がアナリティカルタイプの上司であれば、「数字と客観的な事実を詳細に説明して渡すのが親切だ」と信じて疑いません。しかし、相手がエクスプレッシブタイプの部下だった場合、その細かすぎる説明に息が詰まり、「なんだかワクワクしない、面白くなさそうな仕事だ」と受け取られてしまう可能性があります。
「自分がされたい任せ方」が、必ずしも「相手が望む任せ方」ではないのです。
相手に寄り添う「共通言語」として活用する
現在では、インターネット上で「ソーシャルスタイル診断 無料」と検索すると、15〜30問程度のシンプルな質問に答えるだけで、お互いのスタイルを判定できる簡易テストがいくつか提供されています。
社内のミーティングや研修の機会に、チーム全員で一度試してみるのも非常に効果的です。お互いの結果を共有し合うだけで、職場全体のコミュニケーションへの理解が驚くほど深まります。
ちなみに、私も無料診断をいくつかやってみましたが、ほぼ百発百中で「エミアブル(協調型)」でした。思ったとおりの結果ではあるので、結構信頼性は高いんだと感じています。
ここで最後に強調しておきたいのは、この診断の目的は「あの人は〇〇タイプだから、自分とは合わない」とレッテルを貼って距離を置くためのものではない、ということです。
本来の目的は、「相手が心地よいと感じるコミュニケーションの“言語”に、こちらがほんの少しだけ歩み寄って、チューニングして話しかけてあげること」にあります。
相手の好む言語に少し寄り添うだけで、仕事を任される部下の「やらされ感」は信頼感へと変わり、あなたの「仕事を振る不安」も大幅に解消されるはずです。
まずは、目の前の部下がどのスタイルに近いか、日々の言動や口癖から観察することから始めてみませんか?
では、また!



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