真面目な人ほど陥る「業務抱え込み」の罠。組織を強くするエンパワーメントのすすめ

組織・チームビルディング

こんにちは、中小企業診断士×薬剤師の「はらだ」です。

これまで薬剤師としていくつかの医療現場に立ち、現在は中小企業診断士としてさまざまな企業様と関わる中で、店舗型ビジネスのマネジメントにおける「ある共通の課題」をよく目にします。

それは、店舗の責任者や管理者に任命される人ほど、「とても真面目で、責任感が強い」ということです。

しかし、その真面目さゆえに、あらゆる業務を一人で抱え込んでしまい、結果として組織全体が停滞してしまうケースが少なくありません。今回は、管理者が業務を抱え込むことで生まれる問題点と、それを打破するための「エンパワーメント(権限移譲)」について考えてみたいと思います。

業務の抱え込みが引き起こす「3つの問題点」

「背中を見せないと部下がついてこない」「部下の負担を減らしてあげたい」という優しい思いから、管理者はついつい仕事を自分でやってしまいがちです。しかし、この抱え込みが、大きく分けて3つの深刻な問題を引き起こします。

① 部下が育たない

管理者が良かれと思って業務を先回りして片付けてしまうと、部下は一見働きやすそうに見えます。しかし、そこから「やりがい」や「成長の機会」が奪われてしまいます。

管理者の重要な役割の一つは「部下の育成」です。そこが蔑ろになると、組織としての成長が止まってしまいます。また、最近の若手層は「この職場で自分は成長できるのだろうか」という不安から離職を選択する傾向が強まっています。管理者が突然病気などで抜けたときに誰も穴を埋められないという、組織としての大きなリスクも抱えることになります。

② サービスの質が下がる

部下が育たないと、管理者と現場のスキルのギャップは開く一方です。次第に管理者は「自分ばかりがこんなに苦労しているのに……」と理不尽な思いを抱くようになります。

管理者のイライラやピリピリした空気は、確実に職場全体に伝染します。「みんなで店を良くしていこう」という前向きな意識が薄れ、最終的にはお客様へのサービスの質が低下するという悪循環に陥ります。

③ 部下が「管理者になりたがらない」

毎日多くの業務に追われ、いっぱいいっぱいになっている管理者の姿を見て、部下たちはどう思うでしょうか。

「仕事ばかり増えて、周りからは煙たがられて、給料が少し上がっても割に合わないな……」

特に私生活の充実やワークライフバランスを重視する若い世代にとって、そのような管理職の姿は魅力的に映りません。「あんな風になるくらいなら、今のままでいい。あるいは別の会社へ転職しよう」という意識を植え付けかねないのです。

私自身、いくつもの医療現場で、この「真面目な管理者が孤立して潰れていく現場」を実際に目撃してきました。では、この状況を脱するためにはどうすればいいのでしょうか。

その鍵となるのが、「エンパワーメント(権限移譲)文化の醸成」です。

エンパワーメントを成功させる「3つの重要要素」

エンパワーメントとは、単に「仕事を丸投げすること」ではありません。うまく組織に浸透させるためには、次の3つの要素が不可欠です。

1. 目的やビジョンの共有

ただ「この業務をやっておいて」と渡すだけでは、部下は「仕事を押し付けられた」としか感じません。会社の目指す方向性や、その業務が組織においてどんな重要な役割を持っているのかを、明確に言葉にして伝える必要があります。

例えば、上司から「ここにレンガをひたすら積んでくれ」と頼まれたとします。

指示された側としては、「重くて疲れるし、なぜこんな作業を続けなければいけないんだ」と、不満や負担感ばかりが募ってしまうはずです。業務命令なのでやるしかありませんが、これではモチベーションが上がるはずもありません。

しかしこの時、「ここに嵐にも耐えられる頑丈な建物を造って、災害に怯える人たちの避難場所にしたい。そのために、力を貸してほしい」と、その先にある目的を共有されたらどうでしょうか。

単なる作業だった「レンガ積み」に明確な意義が生まれ、取り組むモチベーションはガラッと変わるはずです。

業務を任せるときも、これと全く同じです。単に「この作業をやっておいて」と伝えるだけでは、前者の「ただひたすらレンガを積め」と言っているのと同じで、部下にとってはただの重荷になってしまいます。まずは、業務を渡す人と受け取る人で、この「目的」を共有することが大切です。

2. 対象者の把握

業務を託す相手の状態を正しく知ることも重要です。 「その人は今、どれくらいの業務を抱えているか」「余力はどのくらいあるか」「新しい挑戦に前向きになれそうか」

これらを把握するのは、一朝一夕ではできません。普段からの地道なコミュニケーションを通じて、メンバーの「人となり」を知っておく必要があります。自分の状態を理解した上で任せてくれる上司と、何も知らずに投げてくる上司とでは、受け取る側のモチベーションに天と地ほどの差が生まれます。

※ちなみに、これらを把握するためには、組織における「心理的安全性」が極めて重要になります。このお話はまた次回、詳しく書かせていただきますね。

3. 移譲後の支援とフィードバック

「任せたから」と渡しっぱなしにするのは絶対にNGです。相手は自分よりも経験の浅い部下であることがほとんどです。「予定通りに進んでいるか」「何か困っていることはないか」を、あらかじめ決めたタイミング(進捗共有のポイント)で確認し、いつでも相談に乗れる体制を整えておくことが大切です。

ここでのポイントは、主導権は部下に持たせつつ、「マイクロマネジメント(過度な干渉)」にならないように見守ることです。細かく口を出しすぎるとモチベーションが下がってしまいます。信じて任せる姿勢をベースに、適切なフィードバックを与えてあげることが成長を促します。

最後に:自走する組織を目指して

エンパワーメントの文化が根付くと、部下が主体的に育ち始めます。そして部下が育つことで、管理者自身にも「新しいことに挑戦するための余力(時間)」が生まれます。

この好循環こそが、変化の激しい時代を生き抜く「自走する組織」を創り出すのだと信じています。

まずは身近な小さな業務から、目的を添えてメンバーに託してみませんか?

では、また!

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