書籍『全員を戦力にする人財育成術』に学ぶ、人が育つ組織の共通点

書籍

こんにちは、中小企業診断士×薬剤師の「はらだ」です。

チームビルディングや組織づくりを専門とする私にとって、常に強い関心を持ち、その仕組みに感心してやまない企業があります。それが「マクドナルド」です。

いつ、どこの店舗に行っても、一定以上のクオリティでサービスが提供されているのはなぜか。1店舗だけの高級レストランであれば、目の届く範囲で質の高い接客を行うのはいわば当然(相応の顧客価値を求められるため)かもしれません。しかし、全国に3,000店舗以上を展開する巨大チェーンで、これほどのサービスの質を均一に担保し続けるのは、並大抵のことではありません。

その強固なマネジメントの背景を知りたくて手に取ったのが、今回ご紹介する書籍、有本均氏の『全員を戦力にする人財育成術――離職を防ぎ、成長をうながす「仕組み」を作る』(ダイヤモンド社)です。

今回は本書の概要とともに、私が特に現場の経営者や管理職の皆様に共有したいと感じた「2つの視点」について、自身の経験も交えながら紐解いてみたいと思います。

本書の概要:教育と評価を仕組みとして回す

まずは本書の全体像を簡単にご紹介します。

  • 著者・有本均氏の実績 早稲田大学在学中にマクドナルドでアルバイトを始め、入社後は店長、スーパーバイザーを歴任。マクドナルドの社内教育機関である「ハンバーガー大学」の学長を務めた人物です。その後、ファーストリテイリングの柳井正社長に招かれ「ユニクロ大学」の部長も務めました。まさに日本を代表する二大チェーンの人財育成の基盤を築いた、育成のプロフェッショナルです。
  • なぜ人財育成が必要なのか 深刻な人手不足が続く現代において、「最初から優秀な人財」を採用することは極めて困難です。だからこそ、「採用した人をできる人財に育てる(=全員を戦力にする)」ことにしか企業の活路はありません。利益を生み出す最大の土台こそが人財育成です。
  • 「グローイング・サイクル」の活用 人が育つ仕組みとして、本書では「基準を示す」「教える」「要求する」「評価する」という4つのステップを循環させるメソッドが提唱されています。
  • マネージャー教育と評価制度の運用 現場の教育(OJTなど)だけに頼るのではなく、適切な「評価」とセット(両輪)で回すことで、初めてマネージャー層が仕組みとして人を育てられるようになります。

視点①:「基準を示す」ことと「実行を要求する」ことの重み

私が本書を読んで、特に管理職の現場において重要だと感じたのが、グローイング・サイクルにおける「基準を示す」「要求する」という2つのプロセスです。

まず「基準」というゴールを明確にする

人を教育するためには、その人にどうなってもらいたいのかという「目指すべき基準(ゴール)」を明確にする必要があります。これがないと、教える人によって内容がバラバラになり、完全に教育者個人の能力任せになってしまいます。 私自身、現場で同じような状況を何度も経験してきました。共通の基準があるからこそ、教える側も教わる側も迷わずに指針を持つことができ、教育の質が一定に保たれます。役職やポジションごとに求めるゴール(基準)を定めることが、育成の第一歩となります。

「教えっぱなし」にせず、実行を「要求する」

そして、多くの管理職が一番難しさを感じるのが「要求する」という部分ではないでしょうか。 現場ではよく「せっかく教えたのに若手が伸びない」「教育が無駄になった」という声を聞きます。しかしその要因の一つは、指導した後の「実行を要求していない(見逃している)」ことにあります。

例えば、「しっかりと挨拶をしましょう」と指導したにもかかわらず、ある日挨拶をしていない部下を見かけたとき、心の中で不満に思いつつもその場で指摘しない。そして後から「あいつは挨拶ができない」と同僚に愚痴をこぼしてしまう……といったケースです。 上司側の心理として「嫌われたくない」「口うるさいと思われたくない」という気持ちがあるかもしれませんが、これでは「教えっぱなし」です。

大切なのは、できないことを見逃さず、必ず実行を要求すること。ただし、これは「厳しく叱りつける」という意味ではありません。なぜ実行できなかったのかを本人にしっかりと考えさせる、「コーチングの視点」を持って要求することが肝要です。

視点②:評価制度の本質は「人財育成」にある

もう一つ、深く共感したのが「評価制度は人財育成のためにある」という観点です。

皆様の会社では、何のために評価制度を導入しているでしょうか。「給与やボーナスの分配に納得感を持たせるため」「社内の差を明確にするため」といった理由を思い浮かべるかもしれません。

しかし本書では、評価制度の目的は単に処遇を決めることではなく、以下の3つに集約されると述べられています。

  1. 社員に成長してもらうこと
  2. 仕事にやりがいを持ってもらうこと
  3. 長く働きたい(定着して)もらうこと

評価制度は処遇のための道具ではなく、人財を育てるための仕組みである。一見綺麗事のように聞こえるかもしれませんが、人が育つことでサービスの質が上がり、それが売上となり、会社の成長に繋がります。そして、成長できる会社にこそ次の人財が集まります。形骸化した評価制度を続けるくらいなら、一度この原点に立ち戻るべきです。

評価者育成のための「評価会議」の役割

さらに本書では、評価を機能させるための「評価者の育成」についても触れられています。その具体的なアプローチとして挙げられているのが「評価会議」です。

評価会議とは、評価をする立場の人たちが集まり、意見交換をする場です。 「評価項目の意図を正しく理解できているか」「個人の好き嫌いではなく、行動の事実に基づいて評価できているか」をチェックし、評価者同士の目線を合わせることが目的です。

評価という仕事は、時に孤独になりがちです。しかし評価会議を通じて、他者の視点から刺激をもらい、孤独感を和らげることができます。これにより、評価される側だけでなく、評価する側(管理者)も共に成長していく仕組みが作られます。

まとめ

マクドナルドやユニクロといった巨大組織が強いのは、個人のカリスマ性に頼るのではなく、誰もが戦力化する「人財育成の仕組み」が精巧に作られているからです。

  1. 求めるゴール(基準)を明確にし、実行をコーチングの視点で「要求」する
  2. 評価制度を、処遇の決定ではなく「人財育成」の手段として位置づける
  3. 「評価会議」によって評価者の目線合わせを行い、共に成長する

もし自社の育成や評価が「個人の資質任せ」になっていると感じたら、まずは「仕組み」として回すためにどこが不足しているのか、見直してみてはいかがでしょうか。

では、また!

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