こんにちは、中小企業診断士×薬剤師の「はらだ」です。
独立して中小企業様や小規模事業者様の支援に関わる中で、私自身が日々の現場でその大切さを痛感している経営理論があります。それが「ランチェスター戦略」です。
近年、さまざまな業界でM&A(企業の合併・買収)や大手チェーンによる規模拡大が進み、豊富な資金や人手を背景にした低価格・高品質なサービスが全国に広がっています。
「すぐ近くに大手の大型店舗ができて、うちの客足が途絶えてしまった」
「大手の圧倒的な資金力や大規模な販促には、どう頑張っても太刀打ちできない」
経営計画の策定や業務改善のヒアリングでお伺いする中で、こうした切実なお悩みを口にされる経営者の方は後を絶ちません。
私自身、薬剤師という背景を持っているため、調剤薬局の支援に関わらせていただくことが多くあります。この業界でもまさに、全国展開する大手薬局チェーンがみるみる規模を拡大し、大手ドラッグストアも調剤併設型店舗を急速に増やしています。
時代の大きな潮流に呑み込まれ、長年地域に親しまれてきた個人薬局や小さな薬局が顧客離れを起こし、苦しい状況に追い込まれてしまう姿を目の当たりにしてきました。
価格、立地、システム、販促費。あらゆる「会社の経営資源」において大手に劣る中小企業が、大手と同じやり方を続けていては、勝ち目はありません。
ですが、大手が参入してきたからといって、小さな会社に勝ち目がないわけではないのです。今回は、経営資源で劣る中小企業や個人事業主が、大手の波に飲み込まれずに生き残るための「戦い方のコツ」について紐解いてみたいと思います。
大企業の戦い方、小さな会社の戦い方
大手企業が近くに進出してきたとき、一番やってはいけないのは「大手と同じ土俵で正面から勝負すること」です。
なぜなら、大企業と中小企業とでは「戦い方のルール」が根底から異なるからです。ランチェスター戦略では、市場における企業を「強者(業界でシェア1位の企業)」と「弱者(それ以外のすべての企業)」に分け、それぞれが取るべき戦い方を明確に区別しています。
大企業の戦い方(強者の戦略)
大企業は、潤沢な資金や大勢のスタッフ、高度なシステムといった圧倒的な経営資源を持っています。そのため、広いエリアのあらゆるお客様に向けて商品やサービスを届ける「総合戦」を仕掛けます。
大量生産・大量仕入れによる低価格化、アプリや設備による利便性の追求、大きな広告投資など、規模の大きさを武器にして市場全体を取りにいく戦い方です。
小さな会社の戦い方(弱者の戦略)
一方で、資源が限られている小さな会社が、大手と同じように「何でも揃えて、安く売って、広く宣伝する」という総合戦を仕掛けるとどうなるでしょうか。当然、資源が足りずに確実に負けてしまいます。
小さな会社が勝つために必要なのは、正面突破の総合戦ではなく、自社の戦力をピンポイントに絞り込む戦い方(局地戦・接近戦・一点集中)です。
大手がカバーしきれない狭い領域や、手が出せない手厚い対応にすべての力を集中させること。これこそが、小さな会社が生き残るための勝ち筋なのです。
「街の小さなパン屋さん」の例で理解する「小さな会社が勝つ3つの原則」
それでは、小さな会社が取るべき戦い方を、身近な「パン屋さん」の例を通して具体的に考えてみましょう。
あなたの店の近くに、あらゆる種類のパンがずらりと並ぶ大手の大型チェーン店がオープンしたとします。食パン、総菜パン、菓子パン、サンドイッチまで何でも揃い、価格も安く、広い駐車場も完備されています。
このような状況で、小さなパン屋さんはどのように戦えばよいのでしょうか。
1. 「局地戦」:戦う場所やターゲットを狭く絞り込む
大手の大型パン屋さんは、広いエリアから家族連れや通勤客など、あらゆる層を集客する「広域戦」を得意とします。
これに対して、小さなパン屋さんが取るべきなのは「局地戦」です。戦うエリアやターゲットを限定し、その狭い範囲の中で圧倒的な存在感を目指します。
例えば、「近隣の特定の住宅街にお住まいのお年寄り」といったように、狙う市場をギュッと絞り込みます。広大な市場全体で大手に勝つ必要はありません。
今回の例であれば、「パンの宅配サービスを行う」、「バリアフリーを意識した内装にする」などの工夫を凝らし、「選定した狭い市場においては、うちが一番使いやすい」という状態を作ることが局地戦の基本です。
2. 「接近戦(一騎打ち)」:1対多数ではなく「1対1」で深く向き合う
大手チェーンは、レジの自動化や専用アプリの導入など、大勢のお客様を効率よくさばく「1対多数」のシステム化が得意です。
しかし、この効率化には必ず弱点が存在します。それは「一人ひとりのお客様に時間をかけ、個別に対応することが難しい」という点です。
そのため、小さなパン屋さんは、この弱点を突く「接近戦(一騎打ち)」で勝負します。
「〇〇さん、いつもありがとうございます。今日は〇〇さん好みの新作パンが出てますよ!」
このような心の通ったコミュニケーションを重ね、お客様の好みや生活背景を踏まえた対応を実践します。
お客様から「大手の店は便利で安いけれど、自分のことを本当に分かって親身に接してくれるのはこのパン屋さんだ」と感じていただければ、価格や利便性を超えた強固なファン(信頼関係)を獲得することが可能です。
3. 「一点集中(専門化)」:一つの強みや商品だけに全力を注ぐ
大手パン屋さんは、食パンから総菜パンまで何でも揃う「総合店」です。ここで小さなパン屋さんが真似をして品揃えを増やそうとすると、仕入れコストが膨らみ、作業現場はパンクし、売れ残りのロスが増えて倒産まっしぐらです。
そこで必要なのが「一点集中(専門化)」です。
「フランスパンだけに特化した専門店にする」、「アレルギーを持つお子様でも安心して食べられるグルテンフリーパンの専売店にする」、「特定の高級食パンだけに絞る」というように、商品やテーマを一つの強みに絞り込みます。
この徹底した絞り込みは、自社ならではのブランド力を高めることにも繋がります。
品揃えの多さでは大手チェーンに叶わなくても、「本格的なフランスパンが食べたい」、「グルテンフリーの美味しいパンが欲しい」と切望するお客様にとっては、その小さなお店が「一番魅力的で、真っ先に思い浮かぶ第一選択のお店」になります。
全方位に手を広げず、一点に全戦力を集中させることこそが、小さな会社が大手と戦う際の強力な武器となるのです。
わかっていても、自社の戦略を立てるのは難しい
「大手の真似をしてはいけない」
「場所や商品を絞り込んで、1対1の手厚いサービスで価値を上げるべきだ」
こうした理論や考え方自体は、頭では理解できている経営者の方がほとんどです。
ですが、いざ「自社は具体的にどの領域に絞り込めばいいのか」、「大手と差別化できる自社だけの強みは何か」と考え始めると、途端に難しさに直面します。
長年、自社の中で一生懸命に事業を続けてきたからこそ、自分の会社の本当の強みが見えなくなってしまう「灯台下暗し」の状態に陥りやすいのです。
また、「商品を減らしたらお客様が減ってしまうのではないか」という不安から、思い切った決断ができないのも無理はありません。
そんなときこそ、私たち中小企業診断士を頼っていただきたいと考えています。
私たち中小企業診断士の仕事は、難解な専門用語を使って経営者を指導することではありません。市場の変化や競合の参入状況といった「お店の外側の環境」を冷静に分析し、経営者様との対話を通じて、会社の中に眠っている独自の「強み(お店の内側の魅力)」を見つけ出すことです。
経営者の方々が大切にしてきた事業への情熱やこだわりを大切にしながら、無理のない実行プランを組み立て、実行に向けて共に伴走します。
競合の参入や時代の変化に直面し、「このままではいけない」と行き詰まりを感じたとき、一人で抱え込んで悩む必要はありません。活用できる公的支援機関や専門家を上手に頼り、同じ目線で一緒に悩んで前を向いてくれる「伴走者」をぜひ探してみてください。
まとめ
大手が台頭する時代において、小さな会社が大手と同じ戦い方を選んでしまえば、経営資源が足りず苦戦は必至となります。
しかし、戦う領域をギュッと絞り、大手には真似できない1対1の手厚いサービスを提供することで、小さな会社でも選ばれる存在になることができます。
- 大手の真似をせず、場所やターゲットを「絞り込む(局地戦)」
- システム化できない「1対1の親身な対応(接近戦)」でファンを作る
- 商品や強みを「一つに特化(一点集中)」させて一番を目指す
もしも壁にぶち当たってしまった時には、一人で悩まず、私たち中小企業診断士をパートナーとして活用することを検討してみてください。
自社ならではの「強み」を見つけ出し、お客様から選ばれる会社となれるよう、全力でサポートいたします。
では、また!


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