経営者の「こだわり」こそが最大の燃料。事業の軸を言語化する伴走型支援の本質

コラム・現場の気づき

こんにちは、中小企業診断士×薬剤師の「はらだ」です。

独立開業してからこれまで、さまざまな業界や規模の経営者の方々と出会う機会に恵まれてきました。

事業の将来像を描く経営計画の策定や、現場の業務改善に向けたヒアリングの場において、多くの経営者がふと口にされる言葉があります。

「自分が面白いと思えることしか、やりたくないんですよね」 「本気で面白いと思えることじゃないと、結局は長続きしないんですよ」

こうした言葉をまっすぐに語る経営者の方は、決まってご自身の事業に対して並々ならぬ情熱を持っておられます。そして私自身も、お話を聞きながら「この方の挑戦に、ぜひ伴走者として力になりたい」と強く胸を打たれる瞬間でもあります。

しかし一般的に、こうした経営者の強い「こだわり」や「好き嫌い」は、経営改善を進める上では一見すると「足枷(あしかせ)」のように受け取られがちです。

今回は、この経営者の「こだわり」がなぜ中小企業経営において不可欠な強みとなるのか、そしてそれを事業成長へと繋げる支援者の役割について考えてみたいと思います。

「こだわり」は経営の足枷か、それとも強力な武器か

一般的な経営学やビジネス書においては、「顧客ニーズを最優先に考えること(マーケットイン)」や「客観的なデータに基づいて合理的に判断すること」の重要性が説かれます。

そのため、経営者の「これが好きだ」「ここだけは譲れない」「これが面白いからやりたい」という個人的な情熱や直感は、「マーケットを無視した独りよがりな考え」として、修正すべき対象と見なされてしまうことがあります。

確かに、顧客や市場の視点を欠いた自己満足の事業展開は危険です。しかし、経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間)が限られている中小企業においては、教科書通りの正論や他社の成功事例をそのまま真似るだけでは、大企業や競合他社の中に埋もれてしまいます。

他社には真似できない独自の強みや、困難な状況でも事業を推進し続けるエネルギーの源泉を紐解くと、そこには必ず経営者自身の強い「こだわり」が存在しています。

「こだわり」とは、単なる我がままや偏屈さではありません。それは、その企業が市場で生き残り、顧客から選ばれ続けるための「揺るぎない軸(アイデンティティ)」そのものなのです。

軸がしっかりと定まっているからこそ、激しい市場環境の変化に直面した際にも、ブレることなく思い切った経営判断を下すことができます。

なぜ「こだわり」を無視した提案は失敗するのか

コンサルタントや支援者が犯しがちな過ちの一つに、「客観的に見て正解だと思われる施策」を経営者に押し付けてしまうという点があります。

豊富なデータを集め、市場分析を行い、財務的なシミュレーションも完璧に整えられた、一見すると反論の余地がない施策。しかし、そこに経営者自身の「こだわり」や「しっくり感」が反映されていない場合、その施策が成果を結ぶことはまずありません。

なぜなら、どれほど論理的に優れていても、経営者自身が心から納得していない施策を実行しようとすると、次のような心理的変化が生まれてしまうからです。

当事者意識(主体性)の薄れ

自分自身の想いやこだわりと剥離した施策は、「やらされている感」を生みます。経営者自身が「自分の事業」として腹落ちしていないため、実行に向けた熱量が現場に伝わりません。

壁にぶつかった際の「他責化」

いかなる優れた施策であっても、実行の過程では必ず予期せぬトラブルや一時的な成果の停滞が発生します。その際、自分のこだわりを殺して始めた施策であると、「ほら、やっぱり上手くいかなかった」「専門家から言われた通りにやっただけだから」と、無意識のうちに失敗の責任を外部に求めてしまいます。

経営という困難な道のりにおいて、最後の最後で踏ん張りを効かせ、現場を引っ張っていくのは、ロジックではなく経営者自身の「どうしてもこれを成し渡したい」という熱量です。

支援者が提案すべきは、経営者のこだわりを排除した「反論の余地がない正解」ではなく、経営者のこだわりを最大限に活かした「勝てる実行プラン」でなければなりません。

支援者に求められる真の役割は「こだわりの言語化」

では、私たち中小企業診断士のような支援者は、経営者の「こだわり」とどのように向き合うべきなのでしょうか。

現場でお会いする経営者の多くは、ご自身の内面にある情熱や美学を、最初から綺麗に整理された言葉で説明できるわけではありません。多くの場合、「なんとなくこっちの方が面白い」「このやり方は好きになれない」といった、感覚的あるいは断片的な言葉として表現されます。

だからこそ、支援者に求められる真の役割は、経営者の頭の中にある「こだわり」を丁寧に聴き取り、第三者にも伝わる「客観的な言葉とロジック(経営計画)」へと翻訳することにあります。

ヒアリングの対話を通じて、以下のような問いを重ねていきます。

  • 「なぜ、数ある選択肢の中でその方法に惹かれるのでしょうか?」
  • 「創業から現在に至るまで、お客様から最も喜ばれたと感じる瞬間はいつでしたか?」
  • 「逆に、どのような仕事の受け方をした時に、違和感やストレスを感じましたか?」

こうした対話を繰り返すことで、経営者自身も無意識だった「自分の譲れない価値観」や「事業の本質的な強み」が整理され、言葉として立ち現れてきます。

感覚的だったこだわりが、明確な「事業の軸」として言語化された瞬間、経営者の方の表情は一変します。自身の原点や存在意義を再確認した経営者は、迷いを捨て、圧倒的なスピード感と推進力で行動を開始されるのです。

言葉にされた一本の軸は、企業の成長に向けて背中を押す強力な「燃料」となります。

経営者の「本当にやりたいこと」に寄り添う右腕として

私たちが提供すべき支援は、一方的に答えを教える「指導」ではありません。経営者が大切にしてきた想いやこだわりを深く理解し、それを時代のニーズや市場の構造に合わせてどのように表現・展開していくかを共に考える「伴走」です。

「自分が面白いと思えることをやりたい」という経営者の純粋な衝動は、事業を飛躍させるための芽そのものです。

正論でその芽を摘み取るのではなく、どうすればその「やりたいこと」が持続可能なビジネスとして成り立ち、顧客に価値を届けられる仕組みになるのか。

私自身、経営者のこだわりを誰よりも尊重し、本当にやりたいことの実現に向けて共に悩み、共に汗を流せる信頼される右腕であり続けたいと考えています。

自社の事業の軸や、次の一手に迷いを感じている経営者の方は、ぜひ一度ご自身の「こだわり」を言葉にしてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

では、また!

コメント

タイトルとURLをコピーしました